SS:髭と、彼女とお前

小説/SS

日記

季節も大分秋めいてきましたね。寒暖差で体調を崩さない様、気を付けていかないとですね🍁

さてさて、またネタをSSに昇華することが出来ました。いいペースいいペース。アウトプットとフィードバックってやっぱり大事ですね。大分SSと言いますか、文章のテンポが掴めてきた気がします(*´ω`*)

今回のSSはさんおじが30代の頃のお話です。ネタの経緯としましては、冬馬さんは夏野の些細な一言に、一年計画で何かしたりするだろう愛の重さがあるけれど(例えばバレンタイン等)。夏野の場合、彼女が髭好きだったとして。ちょろっと生やした時期があったりして、さんおじで久々にあったりした時に、冬馬さんにドン引きされるんだろうなぁという妄想から発展しました。美桜ちゃんと出会う前の時代なので少し彼らの設定も変えてみてます( ^^) _旦~~

登場人物紹介

※美桜と出会う前、三人が30代の頃のお話です。画像は40代のものです。

夏野 葵(なつの あおい)

 陽気で快活な男性。個人事業を立ち上げたばかりで忙しない日々を送っている。明るく人懐っこいが、少し子供っぽい面もあり、よく冬馬をからかっている。恋人の影響で髭を伸ばすなど、自分を自由に表現するタイプだが、意外と周りの反応に敏感なところも。長年の付き合いから、冬馬のことを大切に思っている。

冬馬 雪彦(とうま ゆきひこ)

 堅実な性格でIT企業の社員として働いている。クールで理知的な性格だが、内には優しさと繊細さを持つ。夏野とは長い付き合いで、彼にだけ見せる特別な一面もある。夏野の変化や言動には敏感で、時折見せる表情の中には彼の本音が隠れている。

木下 秋人(きした あきひと)

 大手飲食店の本社で働く温和で落ち着いた男性。人当たりが良く、友人たちの間では調整役となることが多い。夏野、冬馬とは小学生の頃からの友人。冬馬の本音を唯一知っている人物でもある。

さんおじSS:髭と、彼女とお前

秋人、冬馬、夏野の三人は久々に顔を合わせることになった。夏野が公私ともに忙しく、なかなか三人揃うことがなかったのだ。

その日の集合場所であるファミレスには、秋人と冬馬がすでに席についていた。遅れて夏野が駆け込んでくる。

「わりぃわりぃ!ちょっと仕事がゴタゴタしててよ。」と夏野が息を切らせながら席につく。

「大丈夫ですよ、お疲れ様です。」と秋人がにこやかに迎え、冬馬も「お疲れ様」と短く返す。

「こうして三人で顔を合わせるのも久しぶりですねぇ。」と秋人が感慨深げに言うと、冬馬も「そうだな」と頷いた。

注文を済ませた後、夏野が申し訳なさそうに頭をかく。「オレが中々、都合合わせらんないからなぁ。ごめんなぁ。」

「こうして会えるだけでもいいじゃないですか。気にしないでください。」と秋人は優しく言い、冬馬に視線を向ける。

「事業の立ち上げ時だ。仕方ないさ。」

冬馬は淡々と言いながらも、少し眉をひそめる。「…ただ、身なりには気を付けた方がいいと思うがな。」

「ん?」と夏野は首をかしげる。

秋人もその視線を追いかけ、彼の顔をじっくりと見て気付く。「あぁ、なるほど。なつ、髭を伸ばしはじめたんですか?」

「おーそうそう!無精髭じゃないから許してくれよ。」と夏野は気楽に笑う。

「無理しているんじゃないか?」と、冬馬はどこか鋭く尋ねる。

「おしゃれおしゃれ!彼女から『似合うだろうから伸ばしてみてよ』ってねだられてさ。」と夏野は肩をすくめて答えた。

「……そうか。」

冬馬の返答はどこか無機質だ。

彼の素振りを気にする暇もなく、ドリンクが先に届く。


店員が去った後、「身体は資本だから気をつけてるよ。ありがとな、心配してくれて。」と

夏野が感謝を述べた。冬馬は一瞬、言葉に詰まり、「いや…。」とだけ答えた。

二人のやり取りを静かに見守る秋人。微妙な空気を感じながらも、「まぁ、きみは体格もしっかりしていて、ハンサムですからね。彼女さんたっての希望なら、いいんじゃないですか?」と微笑みながらフォローを入れた。

「似合ってないこともないが…。」と冬馬は小さく呟くと、コーヒーに目線を落とし、「…頼むから顔元には寄らないでくれ」と一言。

「えっ」と唖然とする夏野。

「じゃれて顔を寄せるのはなしだ。髭は不衛生だし、なにより感触が気持ち悪い。」と冬馬は淡々と告げた。

「ま、マジ?」と、まるで砂漠に放り出された様にしなしなと残念がる夏野に、秋人は「感性は人それぞれですからねぇ」と苦笑した。

その後、注文した料理が届き、話題は自然と別の方向へと流れていった。

***

後日、再び三人で集まれる機会に恵まれた。休日の昼前。駅近くの時計台の下、今回は夏野も約束の時間に到着していた。

「お疲れ様です。仕事の方は落ち着きましたか?」と秋人が声をかけると、「ようやっと一段落って感じかな。今日は間に合っただろ?」と夏野は満足げに言った。

「さして急ぐ集まりでもない、各々のペースで構わないさ。」と冬馬が静かに応える。

「へへっ、いつもありがとな~。」と夏野が笑いかけると、「別に、何もしていない。」と冬馬はそっけなく返した。そんないつも通りのやり取りを見て、秋人は微笑んだ。

「…あれ。」

秋人が少し驚いた様に声をかける。

「なつ、きみ、髭剃っちゃったんですか?」

「ん〜まぁな〜」と、どこか煮え切らない返答の夏野に、冬馬が「なんだ、別れたのか。」と直球をぶつけた。

「ひっで!別れてねーよ!」と夏野は慌てて否定する。

少し間を置いてから、「いやぁ…だってユキがよぉ。…ヒゲ生やしてたら、お前によっちゃダメなんだろ?そんなん、剃るしかねぇじゃん。」と小さくぼやいた。

「何故私基準なんだ。別にいいじゃないか、自分の好きにしたら。」と、冬馬は怪訝な顔で問い返す。

「いーの!オレがそうしたかったの!別にお前のせいとかじゃねーよ。」と夏野は強がるように言った。

「彼女は良かったのか?」と冬馬が問いかける。

「いーだろ〜。ちゃんと一回は応じたんだからさ。」と夏野は笑って答えた。

「…そういうものか。」と冬馬が静かに呟く。口調こそ変わらないが、その表情はどこか柔らかくみえた。

「これでユキをおちょくれるんだったら、安いもんよ!」と夏野は笑いながら冬馬に組み付き、彼の頭をわしゃわしゃと撫で回す。

「おいやめろ、髪が乱れる。」と冬馬は少し不機嫌そうにしつつも、どこか満更でもなさそうだ。

そんな二人を見ながら秋人はふっと微笑み、「まぁ、よかったですね。」と意味深長に呟く。

「「なにが(だ)?」」と二人が同時に聞き返すと、秋人は「さぁ、なんでしょうねぇ。」とだけ返す。

「お腹も空きましたし、そろそろ移動しましょうか。」と、秋人が先を促す。そうしていつもの様に、三人は店へと向かうのだった。

余談

髭に対する冬馬の敏感な反応について。単純に潔癖な部分から髭が嫌いということもあるのでしょうが、「自分の知らない夏野」という概念や存在そのものが辛かったのかなと、綴っていて思いました。

なんと言いますか、好きな人が知らない色に染まってしまう過程や結果を目の当たりにするのが、無意識的に辛いんだろうな、と。 会って話す分にはまだ良いとしても、顔を寄せられると、自分のものではない夏野をまじまじと見せつけられている様で辛いのだと思います。冬馬自身が自分のそういった気持ちを理解・整理できていないことがより辛さを増悪させていそうですね。

いつも冬馬さんの重い愛ばかり考えてしまっているので、今回は夏野の重さも描写出来て個人的に満足しています。こういっては言い方が酷いですが、なつゆきって軽い共依存と言いますか、どっちも互いに対する愛が重たいと思うんですよね(笑)どうしてこうなった(;’∀’)

くっつきそうでくっつかない様子を数十年見せつけられている秋人さんの心境よ…。まぁ当の本人は気にしてなさそうですけどね。秋人さんもああみえて図太い所がありますからね。

それでは今日もこの辺で、ありがとうございました!(*- -)(*_ _)

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