日記
お疲れ様です!やってきました!ホワイトデーですね💛💙
あきみおの短編小説、間に合いました~💕あきみおはやっぱりしっとり温かい話が合いますね~結構いい感じに描けたかな~と思うので楽しんでいただけますと幸いです😌🍀
SS:甘くて優しい、おくりもの

―― 1週間前
「……さくらさん。」
会計を終え、喫茶店を後にしようとしていた美桜に、店主である秋人が声をかけた。彼は先程までの穏やかさとは打って変わり、少し緊張した面持ちで続ける。
「あの…来週あたり、また店に来られる予定はありますか?」
「え?」
予想していなかった問いに、美桜は一瞬きょとんとする。
秋人から予定を聞かれたのは、初めてのことだった。
「あぁいや、その…無ければいいんです。ただもし予定があればお聞きしたくて…。」
ぎこちなく、申し訳なさそうに秋人は目線を下げていく。
「……もしかしてバレンタインデーのお返し…ですか?」
今から1週間後…それは丁度ホワイトデーと重なる日だった。
先月のバレンタインにプレゼントを渡していた美桜は、思いつきのままストレートに尋ねた。
すると、秋人は顔を赤らめ、困ったように笑った。
「あぁ……はい。いや、ホワイトデーというには甚だしいと言いますか…ただお礼をと―」
「もちろんお邪魔します!」
しどろもどろな秋人に対し、美桜が食い気味に返す。
「3月14日の14時に伺いますね!」
そう話す美桜の瞳は爛々としていた。彼女の様子に気圧されながらも、秋人はどこかほっとした様に表情を緩ませた。
「ありがとうございます。では、その頃に。お待ちしていますね。」
―― そして、約束の日。
ホワイトデーの午後、喫茶店の扉を開けると、優しいコーヒーの香りが鼻をくすぐった。
「さくらさん!ご足労いただいてすみません…。」
変わらない、心地のいい空気。そんな中、秋人は申し訳なさそうな面持ちで美桜を迎え入れた。その表情には1週間前と同じ様に、少し緊張が入り混じっている。
「いえいえ!お邪魔します~!」
そんな彼とは対照的に、いつも以上に楽しそうな様子で、美桜は店の敷居を跨ぐ。
「どうぞ、こちらへ。」
秋人が、奥の落ち着いた席へと美桜を案内する。彼女を誘導した後、秋人はカウンターの棚から小さな箱を取り出した。
「……これを、受け取っていただけますか?」
差し出されたのは、白いリボンでラッピングされた茶色の小箱だった。
「わぁ~ありがとうございます!!」
美桜は満面の笑みでそれを受け取った。
「えっと……開けてもいいですか?」
「ええ、ぜひ。」
包みを解くと、そこには、柔らかな焼き色をしたマドレーヌが、ふんわりと並んでいた。
「わぁ……!」
「レモン風味のマドレーヌです。手作りで失礼ですが……バレンタインのお返しに。」
「木下さんが、作ったんですか?」
「はい…。店をしていてなんですが、お菓子はあまり自信がなくて…。お口に合うと良いのですが…。」
そう言いながら、秋人は気恥ずかしそうに目を伏せる。
「木下さんの手作り…。ありがとうございます!とっても嬉しいです。」
包みを開き、一つ手に取る。
ほんのり温かくて、焼き立てのような優しい香りがした。
「良ければ、こちらでいただいてもいいですか?」
美桜の希望に、秋人は提案を重ねた。
「お時間がある様なら…。折角なので少し温めましょうか。」
「ありがとうございます!」
秋人はマドレーヌをオーブンで温め直し、それに合う紅茶を添えて彼女に出した。
「わぁ~素敵すぎます~!紅茶まで~!」
白地に花の模様が入った可愛らしい茶器と紅茶、そしてマドレーヌを見回して興奮する美桜。
「ふふっ、ルフナという紅茶で、焼き菓子によく合うんです。どうぞ召し上がって下さい。」
そんな彼女の様子を見て秋人は穏やかさを取り戻した様にはにかんだ。
「では、いただきます…。」
マドレーヌを一口。
口の中に、温かくしっとりとバターの香りが広がり、次いでレモンの程よい酸味が追いかけてくる。
ふんわりとした生地が、味わうほど甘く溶けていく。
「……んんっ!!おいしい!」
美桜の目が、ぱっと輝く。
「ほんとうですか?」
「はい! しっとりしてて、レモンの香りもすごく良くて……! 木下さん、凄いです!!お菓子作りとってもお上手です!!」
「いやいや…でも、気に入っていただけてよかったです。」
秋人はどこかほっとしたように微笑んだ。
一息ついて、紅茶をゆっくりと含む。マドレーヌの甘さと、ルフナの濃厚な味わいが合わさり、さっぱりとした後味が口の中を流れていく。
「ん~!!!マドレーヌの甘さと紅茶の甘さが!!凄い!織り交ざってより甘くて…とにかく凄いです!!木下さんのチョイス凄すぎます!!」
「はは…光栄です。バレンタインのときに、さくらさんが下さったお菓子も、とても美味しかったですよ。」
「それは…有名店のものだからですよ〜!」
「ですが、手作りのクッキーもいただきましたよね。」
「あっ……。」
美桜の顔が、少しだけ赤くなる。
「猫のアイシングクッキー、可愛かったです。食べるのがもったいないくらい。暫くしていただきましたが、味もしっとりとしていて、アイシングの甘さと食感もとてもよかったです。」
「本当ですか……? わたし、お菓子作りは好きなんですけど、へたっぴでうまく作れなくて……。」
「いえ、そんなことはありませんよ。とても丁寧に作られていて、さくらさんらしいなと思いました。」
秋人は、穏やかに微笑む。

「だから、ぼくも何か手作りでお返ししたくて。拙いですが、気持ちだけでも。」
そして困った様な笑みを浮かべて、そう続けた。
「そんな……とんでもないです。すごく、すっごく嬉しいです!」
美桜は愛おしそうな表情でマドレーヌを見ながら、秋人に嬉しさを伝えた。
「…ふふ、喜んでいただけて、ぼくも嬉しいです。」
美桜に釣られてか、秋人も同じ様にはにかんでいた。
***
「ごちそうさまでした!本当にありがとうございました…!」
「いえいえ、こちらこそ喜んでいただけて良かったです。あぁ…それと…。」
再度カウンターから物を取り出す秋人。
「手作りだけでは…と思いまして。これも良ければ召し上がって下さい。」
そういって、白と水色のラッピングが施された紙袋を美桜に手渡す。
「えぇっ!?そんな!!こんなにもらってしまって…!」
「きみからも、お店のものと、手作りのものをいただきましたから、おあいこということで、ね?」
驚く美桜に対し、ふふっと微笑む秋人。申し訳ないと思いながらも、ありがたくプレゼントを受け取る美桜であった。
***
帰宅後、美桜は早速、父である大樹に昼の出来事を伝えた。
「沢山美味しい物をもらってよかったねぇ。」
娘の話に、にっこりとした笑顔で返す。
「もうびっくりしちゃった~いいのかなぁって~」
「だいじょうぶ、大丈夫。そういうのは持ちつ持たれつ、好意は素直に受け取ればいいんだよ。」
「…うん、そうだね。その方が木下さんも喜んでくれるよね。」
父の言葉にうんうんと、頷く美桜。
「そうそう。受け取った幸せに感謝して、少しずつお返ししていけばいいよ。」
大樹も朗らかに相槌を打つ。
「だね。よ〜し、そしたらプレゼント開けてみようかな!」
「お〜いいねぇ。楽しみ楽しみ〜」
「お父さん、しずの分まで食べちゃダメだからね!それとお母さんのお供えの分も!」
「わかってるよ〜」
美桜がスルスルとラッピングをほどいていく。包みから顔を出したのは、白いアイシングがたっぷりとかかった、1ロールのバウムクーヘンだった。
「わぁ~~!!おいしそう!!」
「おぉ~~おいしそうだねぇ。」
二人して感嘆の声を漏らす。
「アイシングがたくさんかかって…これ絶対美味しいよお父さん!!早く食べよ〜!」
早速切り分ける準備に入る美桜。
「1ロールだなんて、木下さんも太っ腹だねぇ。」
大樹はニコニコとロールケーキを見つめている。
「……そういえば美桜。お店でいただいたのはマドレーヌだったかい?」
思い出したように、ふと大樹が問う。
「えっ、そうだよ。それとえっと…ルフナっていう美味しい紅茶!」
「…その木下さんって人、丁寧でお優しい人なんだろうねぇ。」

「そうだけど…どうしたの急に…。」
困惑する美桜に対して、バウムクーヘンを眺めながら大樹が呟く。
「ホワイトデーのお返しには意味があってね…。
マドレーヌは重なる2枚貝のイメージから『あなたともっと仲良くなりたい』という意味があって。
バウムクーヘンには年輪になぞらえて『幸せがずっと続くように』という意味があるんだ。」
「そうなんだ…。」
美桜の父、大樹は童話作家を生業としており、物事の意味には詳しい面があった。
「この組み合わせなら意味を知っている可能性が高いんじゃないかな~と。
まぁ確証はないけどねぇ。…う~ん、美味しいなぁ。」
そういって美桜が切り分けたバウムクーヘンを頬張る大樹。
「あっちょっとお父さんフライング!!も~わたしがもらったんだよ!!」
ぷんぷんと怒る美桜。ただ父の見解には、どこか得心を得ていた。
**
その夜、美桜は自室で寝ころびながら、スマートフォンでホワイトデーの贈り物の意味合いを調べていた。
「こんなに色んな意味合いがあったんだ…。」
知らなかった…と驚く一方、父の見解は美桜の中で確信に変わっていた。
スマートフォンから、手に持っていた小さなカードに目線を移す。
──「 温かい贈り物を、ありがとうございました。ささやかですが、お返しを。良ければご家族で召し上がって下さい。」
実はバウムクーヘンの包みには、メッセージカードが添えられていたのだ。
秋人が書いたであろう柔らかな文字が、そこには並んでいた。
それは、秋人らしい、丁寧で優しい気遣いだった。きっと彼がくれたプレゼントにも、意味があるのだろう。
マドレーヌの様に、心にふわりと溶け込むような、それでいて年輪の様に全てを包み込む温かさが、確かに感じられた。
天井に向けてカードをかざす。遮られた白い光がちらちらと明滅する。
(…木下さん。
このお返し……わたし、大事にしますね。)
目を伏せ、心の中でそっと呟いた。
彼女の手の中に残ったプレゼント。
それは春の訪れとともに、二人の距離を少しだけ縮める、優しい贈り物だった。
余談
あぁ~恥ずかしい!!けど書けて満足!!(笑)ヾ(:3ノシヾ)ノシ
美桜の家族
本当は秋人さんと美桜ちゃんだけの登場だったのですが、ホワイトデーの贈り物の意味合いを絡めたらよりあきみおらしいな…という発想から、「じゃあ大樹さんにそこをつついてもらおう!」と、登場してもらいました。いや~サブキャラが登場する回はテンションがあがります(∩´∀`)∩ウェーイ
大樹さんが出るならちょろっと、美桜ちゃんの他の家族も触れておきたいな…と欲張りセットにしちゃいました。しずは、美桜の弟である「雫(しずく)」の愛称です。またお母さんへの「お供え」は亡くなっている彼らの母、「柚季さん」のことだったりします。
各キャラクターの詳細については、以下のアイコンを押すとそれぞれのキャラページへと移動しますので良ければご覧ください😊



バレンタインの話
そして前回投稿した「幸せのおすそわけ(バレンタインの話)」の内容を、作中に少しだけ入れてみました(*´ω`)美桜ちゃんが秋人さんに渡したチョコと「猫のアイシングクッキー」の部分です。
読んでいなくても全然問題ない話ですが、こう、続き物になっている感じが、個人的に楽しいですね☺️
一応、以下がバレンタインのお話になります。こちらは漫画なのでサクッとお読みいただけるかと思いますので、良ければご覧下さい~🍫
バウムクーヘンについて
因みに、秋人さんが美桜ちゃんに渡したアイシングのかかったバウムクーヘンは、喫茶店で仕入れているお菓子屋さんのものだったりします。つぐみさんのお店でアレンジをお願いして作ってもらった…という想定です(笑)

ホワイトデーのお返しを考えているのですが、大事な人なので少し特別なものをお渡ししたくて…。つぐみさんのお店のバウムクーヘンが大変美味しいので…(省略)… それのアレンジをお願いすることは出来ますか?
ありがとうございます。でしたらシンプルですが、白いアイシングをかけてみましょうか?(木下さんの大事な人…(・・;))
つぐみさんからしたら、内心「凄いこと聞いた気がする…」って感じだと思います😅後日、彼女から「失礼を承知でお聞きしたいのですが、この間のバウムクーヘン…喜んでいただけましたかね(;´・ω・)」って秋人さん、質問されてそうです(笑)
終わりに
こうして形態にこだわらずに話を連ねて、それを本編に出来たら良いなと考えています(*’ω’*)
ある程度話を作れたら、時系列表に「この話はここら辺の話です~」ということをまとめられたらな~と思っています(´▽`)
それではあきみおのホワイトデー話はこの辺で。実はなつゆきのホワイトデーSSも考えてみたので、よければ以下ももご覧いただけると嬉しいです(´艸`*)
最後に、参考にしたサイトを載せて終わりたいと思います📝
それではありがとうございました!( ^^) _旦~~
参考:「焼き菓子に合う紅茶(ルフナ)について」